「プロジェクトX」と「ステレオ時代」

「プロジェクトX」と「ステレオ時代」

「新プロジェクトX」始まりましたね!

初回は昨日。録画はしましたがまだ見てません。でも楽しみです。

なぜなら、ステレオ時代はもともとプロジェクトXに触発されて作った本だから。


■特別展「プロジェクトX21~挑戦者たち~」との出会い

もともとアンチNHKでしたし、プロジェクトXを放送していた頃は社会人になりたての頃から結婚、マンション購入、長女の誕生、転職と人生の大きなイベントが続いていて、私生活がとても忙しかったこともあり、放送は見たことがありませんでした。
ただ放送が終わった直後だったか、終わる直前だったか、都内で特別展「プロジェクトX21~挑戦者たち~」という展示会が催されて、打ち合わせに出た先がたまたまこの展示会の近くでした。打ち合わせが終わったあと、まっすぐ会社に戻るのが嫌で、なんとなくこの展示会を観たのが転機でした。
当時は自動車雑誌に携わりつつも、学生時代のオーディオ熱が牧野さんとの出会いで再燃していた時期。家電やクルマなど日本が誇る技術や製品の誕生にまつわるストーリーの数々に子供のように感動しました。そしてなんでちゃんと(番組を)見てこなかったんだろう、と後悔したのでした。
その後、当時加入していたケーブルテレビのヒストリーチャンネルで再放送されたり、なぜかお蔵入りになっていた回はレンタルDVDで借りたり、中古ビデオを買ったりと、気になる回はほぼ網羅。
好きな回はナレーションを覚えるほど繰り返し見ました(今もたまに見ます)。
そして「多分こういう開発ストーリーはもっとたくさんあるんだろうな」「あの製品の開発ストーリーも見たい」と思うようになりました。そうそれがステレオ時代の売りのひとつでもある「開発ストーリー」を作るきっかけでした。

 

■プロジェクトXとの出会いから10年

その後、ネコ・パブリッシングに転職。「カー・マガジン」編集部に配属。数年で編集長を拝命したのですが、急速に出版不況に落ちていった時期でもありました。雑誌広告は激減し、月刊の自動車雑誌1本では編集部の食い扶持が稼げず、月刊誌を作りながら別冊やムックを作るということが常態化していました。しかしそんな常態で作った本など粗製乱造を絵に描いたようなものばかりで、返本が来る前に次の本を出す、という完全に自転車操業だったのです。
ステレオ時代はそんなときに生まれた一冊でした。
正直、こんな状況がいつまでも続くとは思ってませんでした。あと何冊か失敗したら編集部が無くなるか、少なくとも私は降格させられる、と感じてました。なら最後に好きなものを作ろう、とまったく路線の違う「中古オーディオ雑誌」の企画を会議に上げたのです。
そもそも雑誌というのは最新のネタを取り上げるのが本道です。ニュースだったりスクープというのが目玉になる事が多いのはご存知のとおりです。そんな中で「古いオーディオを取り上げて面白いのか」という懸念はありました。でもプロジェクトXだって過去のネタを掘り返して、それであれだけ面白いのです。それに私が携わっていた「カー・マガジン」は旧車とかビンテージを中心に取り上げるクルマ雑誌でした。過去ネタが売りになるという事は分かっていました。ただオーディオで同じことができるかどうかは賭けです。
やはり上層部も「そろそろ潮時」と思っていたのでしょう。「最後のチャンスだからやらせてやってください」という上司の後押しもあり、ステレオ時代を制作する許可が出たのです。
とはいえただのオーディオ好きです。業界に伝手もなく、完全に手探りでした。そこでオーディオ熱再燃のきっかけになった牧野さんに助けを求め、完全に「趣味の本」として、なんとか作ったのがステレオ時代の1号だったのです。
もう好き勝手に本を作る機会もないだろう、と思って、一度使ってみたかったアンプ、A-10を特集しました。売れなくてもいいや、という気持ちだったのです。そしてプロジェクトXを見て感じた「開発ストーリーを見たい」という自分の欲求だけで開発者のお話を聞きました。
だからプロジェクトXはステレオ時代の流れを作るきっかけでもあったのです。

 

■新プロジェクトXに思うこと

ある意味私の人生を変えた(というと大げさですが)プロジェクトXが復活したのは、素直に嬉しいです。スカイツリーはともかく、次回はカメラ付き携帯ということで、かなり楽しみにしています。
ただ、これまでステレオ時代を作ってきて、つくづく思うのですが、モノ作りが熱かったのはやっぱり昭和なんですよね…
聞けば新プロジェクトXは平成以降、失われた30年を取り戻す的なテーマだそうで。もちろん「元号」で世界が変わるわけではないので、平成になっても取り上げるべきイノベーションは多いですが、かといって昭和を切り捨てる必要はなかったのでは、と思います、個人的には。
NHK的には「失われた30年」をお題目にしないと、新プロジェクトXのGOが出せなかったのかな…
オーディオ的には、本当はコンパクトディスクはやってほしかったなあ。フルトランジスタアンプやDDプレーヤー、DATあたりはマニアックすぎるとしても。この辺は昭和期ですからね。あとファミコンなんかもありですね。平成以降だとDVDとかMD? プレステも世界を変えたかな。なんとなく専門的で細かいものが多くなっちゃう印象なんですよ。でも新プロジェクトX、2年は続けるという目標らしいので、いずれ細かいところもやるかもしれませんね。
ところでステレオ時代もたまに言われることがあるのですが「日本スゴイ(日本礼賛)に過ぎる」という点。プロジェクトXもステレオ時代も日本製品(プロジェクトXは製品だけじゃないですけど)を取り上げるものだからある程度は仕方ないのですが、そう糾弾されるのは正直遺憾です。すくなくともステレオ時代は「スゴイ」と思えるものだけを取り上げているので、「礼賛」になるのは仕方ないです。逆に日本製でもダメだと思うものはあるけど、取り上げていないだけですから。プロジェクトXもそうなのでしょう。一時企業癒着が疑われてましたが、公共放送はみんなが納得するものを取り上げていかないとダメというのは大変ですね。そんな外野に負けずがんばっていただきたいものです。
だらだらと駄文を書き連ねてしまいすみませんでした。放送が続くことを祈念しつつ締めます。さて言いたいことも言ったし録画を見るかな。
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